鳳仙花
中上健次/鳳仙花(日本文学全集23)
を読んだ。初めての中上健次。
望まれぬ子として生を享けた美しき少女フサは、十五の春に運命の地へと旅立つ
という帯の紹介。
中上三部作――『岬』『枯木灘』『地の果て 至上の時』の前史に当たるよう。
この三部作はまだ読んでない。
この小説を読んでいてずっと思っていたのが、言葉が美しいということ。
紀州の海はきまって三月に入るときらきら輝き、それが一面に雪をふりまいたように見えた。
という一文から物語は始まる。
小説内で、フサには次々と不幸な出来事が降り注ぐが、それとは対照的に、合間合間に現れる自然描写の美しさが目を引く。
それに、逆境に立ち向かい生きていく、たくましいフサの生活が興味深かった。
こんな小説を読んだのは初めてかもしれない。
三日間かけて、空いた時間のほとんどを『鳳仙花』に費やした。
夢中で頁をめくったこの体験は、私の体の奥深くへ沈んでいき、そして無意識のうちに影響を及ぼすかもしれない。