飛んで火に入る夏の蟲。
線路。
校庭。
マンション。
鳥居。
プール。
大通り。
駐車場。
幕末志士の生家跡。
教室。
窓を開ける。
薄黒い雲が空を覆う。
匂い。
あの、雨が降る一刹那前の安らぎ。
そして雨が降る。
別の匂い。
校庭が、灰の斑点を生み出し、そして自らを閉じ込める。
「この、雨の匂い好きなんだ」
窓にもたれかかって、二人で外を眺める。
けれど、周りの目が気になって、すぐに教室を飛び出た。
向かうところなんてなくて、校舎を上へ行ったり下へ行ったり。
教室に帰ると、後ろを振り向いて睨んでくる。
誰もいない、薄暗い図書室。
少し、埃っぽい。
ここから見た、皆既日食。
2009年7月22日。
電車が通る。
毎日毎日眺めている電車。
あれに乗ったら、こことは違う街へ行ける。
そう思うと、少しわくわくした。
線路の先を想像して。
蝉が鳴く。