猫も杓子も。

わかりあえない、なんて知ってるわ。

中世史入門(2/207)

 

桜井英治2013「中世史への招待」大津透 他編『岩波講座日本歴史 第6巻 中世1』岩波書店 

 

 

 

 

はじめに――中世史の魅力

「頭脳の古代、ロマンの中世、体力の近世・近代」

 

一 知の現状と中世史研究

・キャロル グラッグ

中世史は、国家と近代から逃避した社会史家たちの駆け込み寺

 

この約20年間の動向:社会史から政治史・国家史へという「逆流」

 

網野善彦と一般読者を失った中世史

新たな理論を構築しようとしない

 

黒田俊雄「権門体制論」

中世史における社会史的関心=社会の分裂的・多元的側面

荘園研究、武士論の枠組み

 

対外関係史

室町幕府研究

 

停滞した分野

女性史・家族史・身分制論・産業史

 

二 中世の時期区分をめぐって

1 武士と荘園

中世のはじまり

武士の躍進

院権力の成立、荘園制の確立

→いずれも、中世を封建社会と理解

 

・保立道久:「封建制の放棄」

武士と荘園による無媒介な担保

「武士」すら退場させかねない勢い

ただ、現実そこまではいかない

 

中世の特徴(石井進

政治権力の分散化

武士の躍進

主従制

荘園制

仏教を中心とする宗教の時代

 

2 新たな時期区分の動き

古代と中世の連続性の強調する傾向

変化の画期の先送り

→革命史的なイメージ

9世紀の画期性

 

中世の断絶点

14世紀とする見解でほぼ一致

 

石田一

前半は古代の続きで、後半は近世の始まり、その過渡期

→wr:過渡期的様相を持たない時代などないのでは

 

3 「長期の16世紀」とさまざまな波動

中世のおわり=1568年、織田信長入京

→あくまで政治史上

 

・フェルナン ブローデル

「長期の16世紀」

→様々な側面でのタイムラグ

 

周期性をもった歴史への関心

五味文彦・山本武夫

wr:「長期の16世紀」と同時に、「長期の12世紀」の必要性

 

三 東アジアにおける中世日本の位置

貨幣動向―桜井英治

中国隣国型国家

古代日本・高麗・李氏朝鮮・ヴェトナム・琉球

貨幣の自鋳

「対外戦争の脅威を契機として採用された戦時体制」で、「非効率的な体制」

辺境型国家

中世日本・マジャパイト王国

中国銭の使用

中世人なりの合理主義

 

親族組織―坂根嘉弘

双方社会―日本

父系社会―中国

一方に中国的な父系社会が、その対極に日本が位置し、中間に沖縄

 

 

 

 

 

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近現代史入門(1/207)

 

吉田裕2014「近現代史への招待」大津透 他編『岩波講座日本歴史 第15巻 近現代1』岩波書店

 

 

 

 

はじめに――歴史意識の今

①歴史離れ、と同時に、過去を直接無媒介に現在と結びつける傾向

ナショナリズムの復権

③アジア・太平洋戦争の開戦原因や戦争責任に対する関心

 

国民国家論をめぐって

国民国家

国境線で区切られた一定の領域から成る、主権を備えた国家で、その中に住む人々が国民的一体性の意識を共有している国家のこと

 

・西川長夫

普遍性

近代国民国家という普遍のなかで近代日本を捉える

→「戦後歴史学」に対する批判

 

 

問題点

・大門正克:国民は受け身―被拘束性

安丸良夫国民国家的編成への媒介環

 

高橋哲哉

戦争責任概念の精緻化

酒井直樹

国民的責任の問題は、……国民、民族、人種といった同一性を横断して、未来に向けて、新しい社会関係を作り出す……。

 

総力戦体制をめぐって

・山之内靖

戦前-戦後の連続性

戦時下体制により現代日本社会の原型が形成

 

・高岡裕之

ファシズム研究の総括がなおざりのまま、関心が戦争責任論にシフトしたため需要な論点が継承されず

 

総力戦体制論の残された課題

①戦後史学史の中での曖昧な位置づけ

②戦争遂行過程における新たな差異の誕生(+平準化)

③曖昧な決定的な転換

 →森竹磨:戦時期・戦後改革期・高度経済成長期

 

退潮する議論

①連続か断絶か、の二択

②戸邉秀明:ポストコロニアル研究との不十分な接合

 

明治時代の評価をめぐって

国民国家という世界史的な普遍性の中に近代日本を位置づける機運

明治憲法や明治期の指導者への肯定的な評価

→実証的な研究の進展

 

伊藤之雄

君主の政治関与は立憲君主制であることと矛盾しない

・安田浩

上記+近代天皇の特殊性

専制的性格

抑圧的性格

古川隆久

戦争へ至る道は、明治期の国家形成の方法やその結果に根本原因

wr:明治憲法の評価はアジア・太平洋戦争期まで視野に入れるべき

 

歴史学における認識論の問題

「客観的事実」とは何か

歴史学者の特権性への批判

 

岩崎稔

歴史叙述も「物語」の一つ

 

1990年以降、歴史修正主義の台頭

pp.16「成田によれば、長い間、戦後の歴史学界の主流を形成してきたのは、「戦後歴史学派」だった。ところが、1990年代に入ると、「歴史の本質主義」の立場に立つ「戦後歴史学派」に対して、「歴史の構成主義」の立場に立つ社会史派が有力な批判グループとして台頭し、「戦後歴史学派/社会史派/修正主義派の三派」が「鼎立」する状況が生まれた」

と同時に、実証的な歴史学に対する再評価

 

歴史家の歴史認識

安丸良夫

①史料から導き出す「事実」

②現実世界の全体性

③私という個の内面

→存在拘束性

・ジョイス・アプルビー

条件付きの客観性

 

おわりに

歴史家の態度

山田朗

歴史とは、「同時代人=体験者には見えなかったことが、次第に見えてくる」

安田武

・歴史の中に生きていた者には、後世が指摘する程、現実を見れていない

・有馬学

「それ自体の内部には全体をつなぐ論理的な脈絡があるのに、外部(たとえば現代)からは不合理で不可解に見える世界、それを一つのわれわれとは全く異なる認識枠組み(パラダイム)と考える態度」が必要

 

 

 

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