熊野にて
異国で読んだ『鳳仙花』。
紀伊半島の古座と新宮を舞台に、少女から母親へと変化していく物語を夢中で読んだ。
初めて知った中上健次という作家。
その名は深く心に刻みつけられた。
そして、熊野は憧れの地となった。
*****
名古屋から特急で4時間あまり。
伊勢湾を左手に紀伊半島を南下。
志摩半島を越えて尾鷲、熊野市を過ぎ、熊野川を渡ると和歌山県。
メインは熊野三山巡り。
最終日の速玉大社参拝後に、少しだけ新宮を散策した。
*****
最終日はあいにくの小雨。
速玉大社への参拝を終えたあと、丹鶴城へと向かった。
城に上ると、新宮の街を一望できた。
ところ狭しと立ち並ぶ家々。
小説で描かれて、私が頭の中で想像してきたものが広がっていた。
お城をあとにし、とりあえず駅へ向かおうというときに、それは現れた。
ただの団地群なのだが、すこし特別に見えてしまった中上の生誕地。
雨が強くなってきたので、少しだけ写真を撮り駅へと向かった。
ちなみに、駅裏の新地には一寸亭の看板はなく、一本の長い直線道路があるだけだった。